むせと誤嚥 食事の姿勢・食べ方・口の中の清潔
食事のときにむせることが増えると、ご家族は心配になります。 むせは体を守るはたらきの一つですが、むせないまま気管に入ることもあります。 この記事では、むせが起こる仕組みと、食事のときの姿勢、食べ方の工夫、 そして口の中を清潔に保つことの意味を、順番に説明します。
むせはなぜ起こるのか
人ののどは、声を出すために他の動物より長い構造になっているとされています。 この構造のため、飲み込んだ食べ物が気管に誤って入りやすくなります。 食べ物が気管に入ると、体は勢いよく空気を吐き出して押し返そうとします。この動作が「むせ」で、体を守るはたらきの一つです。
むせが起こるには、3つのはたらきが必要とされています。 のどの奥の感覚のはたらき、延髄などの中枢神経のはたらき、 そして横隔膜や腹筋などの筋肉のはたらきです。
のどの奥の感覚は、危険を検知するための感覚とされています。 気管の中まで入ると激しくむせ、気管の手前では軽くむせます。
むせないまま気管に入ることがあります
最も注意が必要とされているのは、 むせない状態で気管に食べ物が入る「不顕性誤嚥(むせないまま気管に入ること)」です。 高齢の方では、感覚の鈍化や脳のはたらきの低下により、 むせない誤嚥が起こることがあるとされています。
不顕性誤嚥では、食べ物だけでなく、無意識に飲み込んでいる唾液も気管に入ります。口の中の細菌が唾液とともに入ることで、肺炎に至ることがあるとされています。そのため、口の中を清潔に保つ口腔ケア(口の中の手入れ)が重要になります。
なお、むせの背景には、誤嚥(気管への食べ物の混入)のほかの状態もあります。 喉頭侵入(声帯付近への侵入)や、咽頭残留(のどに食べ物が残ること)が挙げられています。
食事のときの姿勢
食事のときの姿勢は、飲み込みやすさに関わるとされています。 いすに座って食べる場合は、次のような姿勢が挙げられています。
- いすに深く腰かけ、背筋を伸ばして少し前かがみになります。
- 足の底を床につけます。
- テーブルは、肘が置けるくらいの高さのものがよいとされています。 体とテーブルの間は、握りこぶし1つぐらいの隙間をつくります。
- 麻痺がある場合は、麻痺側に傾かないように、 クッションなどで体を支えます。肘かけがあると安定します。
座った姿勢がとれない場合は、ベッドの背もたれを30度くらいの角度にします。 体がずれないよう、ひざを曲げてクッションなどを当てる方法が挙げられています。首に枕を当てて前かがみにすると、食べ物が気管ではなく食道に流れ、誤嚥しにくくなるとされています。
介助する場合は、立ったまま食べ物を口に運ばないようにします。 あごを上にあげた姿勢になり、飲み込みにくく、誤嚥しやすくなるためです。 介助する方は、食べる方の上体を十分に起こし、 ゆっくり噛んで飲み込むよう伝えることが大切とされています。
食後は、30分から1時間ほど横にならず、頭を起こしておく方法が挙げられています。 どの姿勢が合うかは、飲み込みの状態によって異なります。 指示を受けている場合は、そちらを優先してください。
食べ方の工夫
加齢に伴い、口の中やのどのはたらきに変化が生じるとされています。 噛む力や飲み込む力が弱くなるため、食べ方の工夫が挙げられています。
- むせが生じる食べ物(水分、水分の多い果物、固いもの)を避けます。
- ゆっくり食べ、一口の量を少なくします。
- 軟らかいものを食べる、水分にとろみをつける、といった方法もあります。
飲み物のとろみについては、別の記事「とろみの基本」で詳しく説明しています。
あわせて、餅など詰まりやすい食品については、消費者庁から次のような注意が 呼びかけられています。
- 食べ物は小さく切り、無理なく食べられる大きさにします。
- ゆっくりとよく噛んでから飲み込みます。
- 高齢の方が食べる際は、周りの方も食事の様子に注意を払い、見守ります。
口の中を清潔に保つ
むせない誤嚥では、口の中の細菌が唾液とともに気管へ入ることがあります。 そのため、食べ方の工夫と並んで、口の中を清潔に保つことが重要とされています。
口腔ケアは、食事のあとだけでなく、日々続けることが基本になります。歯や口の状態によって手入れの方法は異なります。 気になる点がある場合は、歯科医師・歯科衛生士などにご相談ください。
軟らかいものばかりを選ぶと起きること
オーラルフレイルは、口のはたらきの低下に注目した考え方です。 むせやすくなった、食べこぼしが増えた、食欲がない、 軟らかいものを好んで食べるようになった、などが例として挙げられています。
歯を失って噛めなくなると、軟らかい食事を選ぶようになるとされています。 すると噛む筋肉が衰え、噛むはたらきがさらに低下する悪循環が生じます。軟らかいものを選ぶことはむせを避ける工夫の一つですが、 そればかりが続くと別の変化につながることがあります。
食べ方や食事の形について迷う場合は、かかりつけ医・医療機関にご相談ください。 歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士などの専門職が関わることもあります。
とろみの量を計算してみる
飲み物にとろみをつけるよう指示を受けている場合は、とろみ剤の量の計算ツールが使えます。指示された段階と飲み物の量から、とろみ剤の量の目安を計算できます。登録不要・無料で、入力内容が送信されることはありません。
出典
本記事は、次の公的機関・学会等が公表している一次情報をもとに作成しています。
- 物を食べた時にむせる原因は?(国立長寿医療研究センター)https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/12.html
- 食事中にむせませんか?(国立長寿医療研究センター)https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/36.html
- これってオーラルフレイル? ー心身の衰えはお口からー(国立長寿医療研究センター)https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/39.html
- 年末年始、餅による窒息事故に御注意ください(消費者庁)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_046
- 安全に食事をとるための姿勢/食事のときに気をつけること(リーフレット)(長崎大学歯学部・福島県相双保健福祉事務所)https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/416289.pdf
- A-12 誤嚥性肺炎(呼吸器の病気)(日本呼吸器学会)https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-12.html