親のもの忘れが気になったら 家族ができる最初の3つのこと
「同じことを何度も聞くようになった」「約束を忘れることが増えた」。 親のこうした変化に気づいたとき、多くのご家族は、どこから手をつければよいか迷われます。 この記事では、ご家族が今日から始められる3つのことを、順番に説明します。
加齢によるもの忘れと、認知症によるもの忘れ
年齢を重ねると、誰でももの忘れは増えていきます。 加齢によるもの忘れでは、体験の一部を思い出せないことが中心とされています。 たとえば、昨日の夕食の内容をすぐに思い出せない、といった形です。
一方、認知症によるもの忘れでは、体験そのものが記憶から抜けることがあるとされています。夕食をとったこと自体を忘れてしまう、といった形です。 このほかにも、同じ質問を短い時間に繰り返す、日付や季節の感覚があいまいになる、 といった変化があらわれることがあります。 料理や買い物の段取り(手順の組み立て)がむずかしくなることもあります。
どちらに当てはまるかを、ご家族だけで判断する必要はありません。 まずは次の3つのことから始めてみてください。
その1 日常の様子を短くメモに残す
受診や相談の場では、「いつごろから」「どんな場面で」変化があったかが大切な情報になります。気づいたことを、日付とあわせて短くメモに残しておきましょう。スマートフォンのメモでも、カレンダーへの書き込みでも構いません。
「同じ話を1日に何度もした」「鍋を火にかけたまま忘れていた」など、 具体的な場面を書いておきましょう。医師や相談員に伝えやすくなります。 お薬の飲み忘れや、通帳・財布の置き忘れの頻度も、あわせて書いておくと参考になります。
なお、「今日は何日?」と繰り返し確かめるなど、ご本人を試すような聞き方は、 ご本人の自尊心を傷つけてしまうことがあります。 日常のなかでの、さりげない観察にとどめるのがよいとされています。
その2 相談できる窓口を知っておく
最初の相談先は、かかりつけ医が基本です。 日ごろの体調やお薬を知っている医師であれば、もの忘れ以外の病気の可能性も含めて相談できます。 専門的な検査が必要な場合は、もの忘れ外来や神経内科などの紹介を受けられます。
かかりつけ医がいない場合や、受診の前にまず話を聞いてほしい場合は、地域包括支援センターが利用できます。 地域包括支援センターは、高齢者の暮らし全般の相談を受け付ける公的な窓口で、 全国の市区町村に設置されています。 多くの場合、無料で相談できます(詳しくはお住まいの市区町村にご確認ください)。 介護保険の申請やご家族の負担についても相談できます。
もの忘れの背景には、認知症とよく似た状態(うつ・せん妄)が隠れていることがあります。 また、甲状腺機能低下症など、認知症のような状態を引き起こす体の病気が 見つかることもあります。 気になる変化が続く場合は、かかりつけ医や医療機関にご相談ください。
その3 チェックリストで様子を整理する
「気になってはいるけれど、どう伝えればよいか分からない」というときは、 質問票の形式で日常の様子を整理する方法があります。
当サイトの「認知症の気づきチェック」は、医師の研究にもとづく質問票を使ったチェックです。 質問票は「SED-11Q(認知症初期症状11質問票)」といいます。 ご家族が日常の様子を思い浮かべながら、11の項目に「ある・ない」で答える形式で、 約2分で完了します。
結果は診断ではありません。受診や相談の場で様子を伝えるためのメモとしてご利用ください。 結果は印刷できますので、受診時にお持ちいただくと、医師に伝える手間を減らせます。
受診のときに伝えるとよいこと
受診や相談の際は、次のような点をメモにまとめておくと話がしやすくなります。
- いつごろから、どんな場面で変化に気づいたか
- 生活の変化(外出・趣味・お金の管理・服薬など)
- 現在かかっている病気と、服用中のお薬
- ご家族から見て、いちばん困っていること
親の変化に向き合う時期は、ご家族にとっても負担の大きい時期です。ひとりで抱え込まず、ほかのご家族や地域包括支援センターと、 早い段階から情報を分け合っておきましょう。通院がむずかしい場合には、医師がご自宅に伺う訪問診療という選択肢もあります。
実際にチェックしてみる
認知症の気づきチェックは、ご家族が答える11項目・約2分のチェックです。登録不要・無料で、入力内容が送信されることはありません。結果は印刷して受診時に使えます。
出典
本記事は、次の公的機関・学会等が公表している一次情報をもとに作成しています。
- 認知症施策(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
- 地域包括ケアシステム(地域包括支援センターについて)(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
- 知っておきたい認知症の基本(政府広報オンライン(内閣府))https://www.gov-online.go.jp/article/202501/entry-7013.html
- Maki Y, Yamaguchi T, Yamaguchi H. Symptoms of Early Dementia-11 Questionnaire (SED-11Q). Dement Geriatr Cogn Disord Extra 3:131-142, 2013(査読つき学術誌(Karger))https://doi.org/10.1159/000350460